安倍元首相内閣の時、国会では審議が白熱していました。統合型リゾート(IR)施設開発のための規則を定める議論です。IRとは、カジノだけでなくショッピングセンター、劇場、ホテル、テーマパークなどの施設を含む総合的なエンターテインメント複合施設を指します。ここでは、カジノ賛成派と反対派の対立を検討してみます。
日本のカジノ:観光の目玉か、それともギャンブルの温床か。
ギャンブル依存症
日本ではギャンブルは違法化されていますが、2017年の厚生省の報告書によると、320万人のギャンブル依存症患者がいます。無作為に選ばれた1万人の住民との対面インタビュー結果では、有効回答は46.9%に当たる4,685人で、そのうち現在もしくは人生のどこかの時点でギャンブル依存症であったとされたのは3.6%でした。
3.6%という数字は、直接比較可能ではないとはいえ、オランダの1.9%、フランスの1.2%、スイスの1.1%を大きく上回り、国際的に高い数字です。依存の原因となる最大の要因は、日本の法律でギャンブルではなく娯楽に分類されているパチンコです。最新のレクリエーション白書によると、パチンコは2016年に21.6兆円という巨大産業になっています。
そのため、カジノ建設が日本のギャンブル依存症を悪化させるのではないかという懸念が当然のように生じます。しかし、シンガポールのケースを引用し、同国のギャンブル問題に関する国家会議(NCP)によると「一般的な懸念に反して、2005年の4.1%から2017年の0.9%へと、カジノ合法化以降カジノ依存症の比率が低下している」と主張しています。
民営ギャンブルの合法化
もしカジノが合法化すれば、日本で初めて民営ギャンブルが解禁されることを意味し、国の政策に歴史的な変化をもたらすでしょう。
現行法では、競馬、競輪、競艇などの国営スポーツ賭博のみが許可されています。こうした事業は、地域経済を活性化するために戦後に始まったもので、運営は非営利にするなど、いろいろな要件に従わなければなりません。例えば、競馬の場合、自治体は競馬からの収入を医療、福祉、教育、スポーツ政策を支援するために使用することを義務づけられています。
法案によると、国・自治体に対してカジノ営業利益の30%を拠出せねばならず、カジノ運営者の利益は残りの70%のみとなるのではないかと不安視されています。